往来写簡

あなたの自由を見つける移動写真館『写真箱』を開催しております。 日々笑って暮らせる、そんな写真を撮っています。

先生と萬五郎。つづき

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バランス。

それぞれの役割のバランス。

 

表現としての光と暗闇。

 

光が全てでも暗闇が全てでもなく。

光によって暗闇は作られ、暗闇によって光が見える。

 

 大きな光源ほど広くやわらかく、

小さな光源ほど狭く鋭い。

 

大きな光は鈍感で何でもかんでも明るくする。

小さな光は繊細で大事なものがよくわからない。

 

強い光は濃い影を作り、

弱い光は淡い影を作る。

 

 

先生のお話を聞いていると、

光と暗闇は、

経済活動と自然の営みの比喩のように感じます。

 

そう言うと、

先生はにっこり笑って、

この辺の人達は家の周りを全部コンクリートにしちゃうんだよ。

と言いました。

 

それは除雪が大変すぎて、

生活がままならないから、

消雪の水を流す為なんです。

と答えると、

 

そしたらまた笑って、

庭の草なんかもね、ぼーぼーでいいんだよ。

と言いました。

 

 

僕もあと2、3年は頑張れると思っていたけど、

人生にはタイミングがあるんだね。

 

僕がここを離れる時は、

この家を壊さないといけないと思っていたからね。

毎年冬を越すために、

他の誰かが維持していくのは、

無理だから。

冬の雪を管理できなければ、

一冬でこの家は潰れてしまう。

 

そんな時に君たちがやって来た。

 

あと2、3年と思っていたけどね。

 

ちょうどこの間、

駅からここまでのバスも廃止になってしまったしね。

そういうタイミングで巡ってくるんだよ。

 

そう言って、

広い縁側の窓から萬五郎の庭を眺めていました。

 

私はカメラを手に取って、

最後に一枚、

先生のその横顔を写しました。

 

 

「やり残したことがあるんだよ」

もう一度、先生は言いました。

 

 

萬五郎のコンセプトは

「継承」

 

先生が取り戻したかった暗闇は、

どんな光が作り出すのだろう。

 

その光を見る為に、

私は萬五郎に関わっていきたいと思います。

 

 

 

 

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